人事労務トピックス

中小企業の経営改善の進め方

人財成長型人事トータルシステム 高い企業価値に向けた人事戦略

企業活動は自ら変化することで達成可能となる
 

『企業活動』は次のように定義付けることができます。

「変転する市場と顧客の要求を見極めて、それに合わせてわが社を変革する活動」

これを言い換え、人財価値を高めるテーマを加えると次のようになります。

「わが社の方向を明確にし、人心を掌握し、修練して同じ方向に向かわしむる活動」

人財成長型人事トータルシステムは、これらの企業活動を具体的に描きながら人財育成に取り組むことを意味します。市場環境適応型の企業を作るためには、企業内の一人ひとりを市場環境に適応できる人財に育て上げていく必要があります。
そのために、どうやって人事の仕組みを作っていくかがポイントとなります。

企業活動の使命は、顧客満足、すなわち「安心と喜びと感動と満足」を提供し続けることです。今日成功している卓越した企業、エクセレントカンパニーと呼ばれる企業は、創業以来長年続けてきた業態に固執することなく、将来の市場の変化を予測しつつ、異業種の業態に変えながら成長を続けてきました。

200年を超える企業が世界で一番多いのは日本であり、これは日本に自ら変化を起こせる企業が育つ土壌があるからだと考えられます。変化に順応するだけでは足りず、変化をリードしない限りエクセレントカンパニーにはなれないのです。

ところが、企業自体が変革できず、疲弊して消滅してしまうケースが非常に多いのが実情です。一般的に企業の寿命は30年といわれますが、実際には、創業から10年経過した時点で数%しか残っていません。企業として永続的に生き残っている100年企業、200年企業は、例外なく戦略の変化を繰り返しています。市場環境の変化を予見して、市場の変化に先んじて自ら変化を作りだしてきたからこそ、事業の永続性を実現してきたといえます。これができないと、事業そのものが陳腐化してしまうからです。

変化を生み出す人財づくりの重要性
 
会社が市場環境に適応し、どんどん変化していく中で、その変化を受け止めることができるか、市場環境が変化に対応し続ける姿勢をとり続けられるかが、人財に求められることになります。

組織内の職位によって求められる役割は当然異なり、若手社員は自社の変化に順応できること、幹部社員は変化を作りだす能力を持つことが重要となります。こうしたメンバーが組織内にそろえば、経験値が高まるにつれて各人に求められる役割は増え、企業としての総合力はアップしていきます。目標とする企業を作り上げていくことは、人財づくりとつながってくるわけです。

ただでさえ、経営環境の変化はピッチを速めています。一例を挙げると、高賃金で雇用が比較的安定していた金融界では、長らく続く低金利政策による収益悪化により、高コスト体質に耐えられなくなってきました。メガバンク3行が3万人規模の人員削減策を打ち出すなど、ビジネスモデルの変更を迫られています。AI(人工知能)による代替が可能な業種・業態を中心に、今後、事業戦略の見直しを迫られる企業が増えてくると考えられます。

しかし、経営環境の変化に伴い、事業内容の変更、組織の改編など企業戦略を再編することは、会社が生き残るための手段として当然のことです。会社という組織を新陳代謝させ、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返し、環境変化に強い会社を実現させていく必要があるからです。企業は常に変化する市場と顧客の欲求に対して、その動向を見極めながら、フレキシブルに自らを変革していかなければなりません。

たとえば、6月に上場したネット上でフリーマーケットを運営するメルカリは、市場に変化を作りだしている一例といえます。広告宣伝費の負担が大きく収益モデルが黒字化に至っていませんが、情報発信を繰り返しており注目すべき存在だと考えられます。

経営者のミッションは、従業員が真に価値のある人生を送らせることができるか。彼らの人生に花を咲かせようというポリシーを持っているかどうかが問われます。市場環境適応型の人財づくりが大きいテーマとなります。

人財成長型人事トータルシステムの2つのねらい
 
現状を見ると、労働集約型のビジネスモデルが付加価値を上げる時代ではなくなりつつあります。こうした環境下で、自社がたゆみなく付加価値を上げていくためには、常に次なる収益モデルを作りだしていくことが肝心です。そこで、人事設計のポリシーとして、ミッションを追い求める人財を育成することが基本的役割となります。20代、30代で鍛え上げ、力仕事をやり切った中で価値観を共有できる人財を作り上げていくのです。

上に立つ者が常にスキルアップし、部下が自らやり抜く形へ導く。経験を通して全員がスキルを向上させていく方向性がベースとなります。

高い企業価値の創造に向けた人事戦略とは、企業戦略を支える従業員を、変転する市場と顧客の欲求に対応し、自ら市場を作り出す「人財」として育てることです。すなわち、生き残りを賭けた「人財活力」を育てる人事・報酬制度の本質的なねらいは、「市場環境適応型の企業づくり」と「市場環境適応型の人財づくり」となります。

人財成長型人事トータルシステムは、この2つの目的を同時に実現するための、いわば設計図となるのです。

人事賃金制度を再設計する本質的なねらいは、以下の2点に集約されます。

① 市場環境適応型の企業づくり
② 市場環境適応型の人財づくり

企業とは、「変転する市場と顧客の欲求を見極めて、それに合わせて我が社を変革する活動」である。

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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