人事労務トピックス

就職氷河期世代の就業支援に向けたハードル

民間の調査会社のディップ総合研究所が、35~54歳の有期雇用就業者(学生を除く)または無職の求職者を対象とした「就職氷河期世代の就業意向調査」の結果を発表しました。調査は2020年11月25日(水)~2020年12月1日(火)にかけて、47都道府県内の18~69歳の男女のうち、学生を除く有期雇用就業者もしくは無職の求職者を対象に行われ、本レポートにはこのうち、35~54歳の1990年代~2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる就職氷河期世代の1,667サンプルが利用されました。

◆正社員として働くことへの希望
現在、無職や非正規雇用で就業している氷河期世代の方のうち、「正社員として働きたい」と思っている人の割合は、「正社員で働きたい」17.5%、「正社員で働きたいが、現在の雇用形態でも許容できる」28.4%を合わせて45.8%。 正社員として働きたいと思いつつも、現状は別の雇用形態で就業している方が半数近くいることがわかりました。雇用形態別では、契約社員と派遣社員の6~7割近くが、正社員という雇用形態を希望しています。

◆正社員として働けていない理由
現在、正社員として働けていない理由は、1位「転職をするうえで年齢が壁になり、採用されなさそうだから」35.9%、2位「再就職に自信がないから」22.5%、3位「正社員の仕事に、自分でもできる仕事があるか自信がないから」「転職をする上で学歴・職歴などに自信がないから」21.9%となり、年齢に対する不安が圧倒的に大きいことがわかりました。

◆就業支援に対する希望
望まれる具体的な支援内容としては、1位「職業あっせん先での就業体験・研修」22.7%、2位「職業あっせん先の見学」21.8%、3位「応募書類作成」20.2%となっています。正社員としての採用にハードルが高いと感じる人が多いなか、座学や研修などといった自己研鑽のための項目よりも職業あっせん先に関するものが上位を占めていて、個人で転職活動をするのではなく、就職から定着までを支援してほしいといった要望が多いことがわかりました。

 現在、政府や自治体がさまざまなかたちで就職氷河期世代活躍支援に向けた対策を講じていますが、本調査では「興味関心はない」と37.7%が回答している一方で、「どのような支援があるのかわかりやすく知りたい」35.5%、「支援内容を具体的に教えてほしい」29.7%と、約3割が活躍支援について前向きな考えを持っていることもわかりました。政府・自治体のさらなる支援策やその周知が求められる一方、人手不足のなか、企業もこの世代の活用に向けた積極的な取組みが望まれるところです。
【ディップ総合研究所の氷河期世代の就職動向に関する調査について】

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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