人事労務トピックス

社労士が解説!労務問題 Q&A「在宅勤務 」②

在宅勤務は労働時間を算定することが難しいため、一定の要件を満たす場合は、労働基準法 38 条の 2 で規定する事業場外みなし労働時間制を適用することができます。
ここにいう一定の要件は、以下のすべてを満たす必要があります。

①その業務が、起居寝食など私生活を営む自宅で行われること
②その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

在宅勤務について事業場外みなし労働時間制が適用された場合は、労働者が就業規則等で定められた所定労働時間勤務したものとみなされます。
事業場外みなし労働時間制を導入する際には、以下の点に留意する必要があります。

●残業代を支払う必要があるか?
→事業場外みなし労働時間制で「労働したものとみなされる時間」が法定労働時間を超える場合、法定労働時間を超えた時間に対しては、時間外労働の割増賃金の支払いが必要となる

●深夜・休日手当を支払う必要があるか?
→深夜(午後 10 時~午前 5 時)、休日(就業規則などで定められている 1 週 1 回または 4 週 4 回以上の休日)に労働した場合、深夜・休日労働の割増賃金が必要

●指示がないのに深夜・休日に業務を行った場合、 労働時間として計算するか?
→深夜・休日に業務を行う場合、事前に申告し許可を得た上で、事後に報告しなければならないこと(事前許可、事後報告制)を、就業規則などで定めている会社で、深夜・休日に業務を行ったが、
・深夜・休日労働の事前申告がない。または、
・事前に申請されたが、使用者の許可を得ておらず、かつ労働者の事後報告がない場合で、以下のすべてに該当する時は、労働基準法の労働時間にならない。

①使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと
②深夜・休日に働かざるを得ないような黙示の指揮命令がないこと
③深夜・休日労働が客観的に推測できず、使用者がそれを知らないこと
④事前許可が実態を反映していないような事情がないこと
⑤事後報告が事実を反映していないような事情がないこと

勤怠管理に関しては、業務日報やパソコンのログイン、ログアウトの状況をチェックすることで「労働時間の状況」を適切に把握することが求められます。
在宅勤務者は、通常の労働者と同様に、変形労働時間制および裁量労働時間制を導入することができます。
この場合は、就業規則にその旨を定めるほか、労使協定が必要となるケースもあります。
なお、在宅勤務で自宅やカフェ、図書館などでパソコンを使って業務を行う場合は、情報漏えいのリスクが伴います。
そこで、リスクの軽減措置として、パソコンの盗難防止対策、持ち出しの際の保護対策などについて規程を定めておくことが求められます。

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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