人事労務トピックス
4.102018
トラブルゼロへ! 就業規則改定のポイント(1)
今回から、就業規則について詳細に説明していきます。 就業規則は「会社の憲法」ともいわれますが、そういわれるだけの重要性を持っていると、多くの企業の人事労務問題を見てきた経験を通して実感しています。
労務問題は経営上、会社に大きなリスクをもたらします。重大な問題だと認識しないまま放置してしまうと、その結果、従業員との信頼関係が崩壊して大きな労務問題に発展してしまうこともあります。
さらには、労働基準監督署の調査による是正勧告や、退職した社員からの「未払い残業代」の訴訟など、多大な経営リスクに発展することになりかねません。
就業規則は本来、会社にとって「リスク回避」のためのツールとなるものです。従業員との信頼関係をもとに「会社を守る」ためには、就業規則の果たす役割は大きいのです。
一方で就業規則とは、経営ミッションのもとで協働していくための行動基準を明示し、経営ビジョンがブレークダウンされた組織のあり方とその仕組み、行動ルールを示すものでもあります。
社員がやってはならないこと、やらなければならないことを明確にします。このように、就業規則で行動基準を明確なルールと示すことで、あいまいさを追放し、社員が動きやすい環境を整えます。
企業としての経営理念を実現するための組織の行動ルール、あるべき人材像とその行動基準を明確にすることによって、会社が何を目指しどこに向かおうとしているのかがより明らかになります。
この意味で、就業規則は単に雇用条件を記すものだけではなく、人を活かし業績を上げる戦略ツールになり得るものなのです。
労働基準法は、会社が従業員を雇用するときには、「賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」としています。
また、労働契約法では、「労働者及び使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」としています。
就業規則は、常時 10 人以上の労働者を使用する会社に義務付けられていますが、労働契約法にいう就業規則は、労基法で義務付けられていない会社が作成する就業規則も含まれます。
就業規則は、労働者の労働条件、待遇等に関する「最低の基準」を定めた労働基準法の基準を下回ることができません。また、従業員と個人ごとに賃金などの労働条件を決定する「労働契約」は、就業規則に定める基準を下回ることはできないことになっています。
一方、労働基準法で定める基準を上回る条件については、就業規則で原則として自由に定めることができます。
労働組合法では、労働組合との労働協約の内容が個別の労働契約となります。
労働基準法では、就業規則に記載すべき事項を、絶対的必要記載事項(必ず記載すべき事項)、相対的必要記載事項(定めをおく場合は必ず記載する事項)、任意的記載事項(内容が法令又は労働協約に違反しないもので記載する事項)に分類して定めています。 このうち、絶対的必要記載事項は以下の通りです。
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項
- 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
高橋 邦名(たかはし くにかた)
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