人事労務トピックス

中小企業の経営改善の進め方 人事賃金制度の改革で企業の活性化を実現 評価制度の作成のための準備

 

経営理念をいかに作り上げるか

 
企業は経営理念を実現するための経営を行っており、人財成長型人事トータルシステムはそのために提唱している仕組みです。
そこで、すべての土台となる経営理念の意義とその作り方を述べておきたいと思います。経営理念は、船が航海する時の羅針盤のようなもので、これがなければただ漂流するだけで、目的地に到着することはできません。また、航海を行う上では、目的地だけでなく、何のためにそこに行こうとしているのか、そして、そこに行くのはどのようにしたらいいのかをはっきりさせることが必要条件となります。
会社が何を目的とし、何のためにどこに行こうとしているかが明確でないと、同じ船に乗っている従業員は不安でたまりません。
そこで、企業のミッションとしての経営理念はなくてはならないものなのです。経営理念は、企業の憲法としてすべての企業活動の拠りどころとなります。
企業が重大な岐路に差し掛かり、重大な意思決定をしなければならない時に立ち返る原点となります。 従業員にとっても、自分たちの仕事の意味を知ることは、各人のやりがいや達成感、満足感を形成する大切な基盤となります。
「われわれは仲間とともに、どこへ行こうとしているのか」。企業経営者と従業員がともに築いていくものが、企業の経営理念なのです。
経営理念づくりの主体となるのは経営者で、まず、社長自身が自分の内面をじっくり見つめることから始まります。
自分自身に対する問いかけとして、具体的に6つの角度から行います。

6つの領域を円にして並べ、それらの中心部に、社長自身がどのように意識し、行動すべきかが浮き彫りになってきたものが経営理念です。
つまり、6つの分野に共通する社長の生きざまが、会社のミッションである経営理念として昇華されるのです。経営理念策定シートを基に、社長をリーダーとして中堅幹部まで含めた会議の席上で話し合います。
会議に参加するメンバー一人ひとりがそれぞれの項目ごとに自分の言葉で記入していきますが、この作業は予想以上に時間と忍耐が必要です。簡単なフレーズですが、一回当たり数時間かけて、考えたフレーズをノートに書き留めながら、なおかつ数回繰り返さないとなかなかまとまりません。
しかし、この作業がメンバーたちに素晴らしい刺激になり、各メンバーが書いたシートを持ち寄って1枚のシートにします。シートの中心部である経営理念の枠内の言葉を選択していき、重なり合っている考え方などを、分かりやすくなるようにまとめます。
なお、企業としての経営理念とセットになるのが、その理念から生まれる会社としての行動であり、これは「行動ミッション」といいます。「私たちはどのような理念のもとで行動するのか」を示したものです。また、全社的な行動ミッションを実現するための、従業員一人ひとりの決意が「従業員宣言」です。
こうして作り上げた経営理念を業務に落とし込むために、評価制度を作成するための準備を行うことになります。

 

経営理念を基にルール化、マニュアル化を推進する

経営理念を実現するために従業員一人ひとりが努力する文化・風土が、企業経営を行っていくうえでの土台となります。
そこで、社内の価値観や考え方が規律される、「規律のある文化」を備えることが必要です。また、「起業家精神の文化」は、本質的には、現状に満足せず常に挑戦しながら変革していく繰り返しであり、同時に、市場環境に適応できるように変化を先取りしていく繰り返しでもあります。
「規律のある文化」と「起業家精神の文化」の両方について、それに沿う内容を体系的にまとめ、マナーも含めたルール化によってルールブックを作り、さらにはルールブックの研修を行う教育を施します。
また、業務ごとのマニュアルについて、しっかりと積み上げて業務を行うこができる体制を作り上げていきます。
ルールから企業風土面の、マニュアルから技術面の、従業員がクリアすべき課題が固まり、それらの課題が評価の対象となります。企業風土に関しては会社として外すことのできない理念を活かしたルールを作り、マニュアルについては一人ひとりの技量がいかに向上したかが評価テーマとなります。以上を整理すると、以下の流れになります。①経営理念を業務に落とし込むために可視化(ルール化、マニュアル化、見える化)を行う②①でルール化、マニュアル化したことを実行したかどうかを評価する仕組みを作る③①と②を作り、評価制度に結び付けるまた、以上の流れを図版化すると以下のようになります。

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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