人事労務トピックス
3.12021
新型コロナ、「収入の減少」「テレワークの定着」「非正規へのしわ寄せ」への課題が浮き彫りに~(独)労働政策研究・研修機構調査
(独)労働政策研究・研修機構が8月26日、5月から8月にかけて行った「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」の一次集計結果を公表しました。公表された調査結果のポイントをみてみましょう。
◆「民間企業の雇用者」では、就労時間や月収に揺り戻し傾向も夏季賞与は約3割が減少
4~5月にかけて「勤務日数や労働時間の減少(休業を含む)」があった人の割合が急増したものの、7月末現在ではやや低下し、他方、引き続き増加した「収入の減少」がこれを上回った。また、7月末現在も4月1日時点と同じ会社で働いている場合の労働時間や税込み月収額の変化をみると、いずれも5月の第2週にかけて低下した後、揺り戻されてきたものの、7月の最終週現在でも通常月の状態には未だ戻り切っていない。
7月末現在の「民間企業の雇用者」(4,194人)の直近の月収額では、新型コロナ問題の発生前のもともと(通常月)の月収と「ほぼ同じ(変動1割未満)」の回答が約7割(70.2%)の一方、「減少した」割合計も4分の1を超えた(26.7%)。また、昨年は夏季賞与(特別手当)を「もらった」場合(2,495人)に、本年の支給額がどうなったか(どうなる見込みか)尋ねると、昨年の支給額と「ほぼ同じ(変動は1割未満)」との回答が半数を超えた(51.9%)一方、「本年は支給無し」(2.0%)を含めて約3割(30.4%)が「減少した」と回答した。
◆休業手当は「半分以上が支払われた」人が半数超、「まったく支払われていない」が2割超
影響として「勤務日数や労働時間の減少(休業を含む)」を挙げた「民間企業の雇用者」938人のうち、自身は働きたい・働ける状態なのに、勤め先から自宅待機を命じられたことが「ある」割合は6割超(64.3%)。また、「休業」を命じられたことが「ある」場合(603人)の勤め先からの休業手当については「休業日(休業時間数)の半分以上が、支払われた」との回答が半数を超えた(54.1%)ものの、「休業日(同)の一部が、支払われた」(21.9%)、「(これまでのところ)まったく支払われていない」(24.0%)もそれぞれ2割超みられた。
◆「在宅勤務・テレワーク」の実施日数は、いったん拡大後急速に減少
「在宅勤務・テレワーク」の1週間あたりの実施日数の変化をみると、新型コロナウイルス感染症の問題が発生する前の通常月では、7割超が在宅勤務・テレワークを「行っていない」と回答していたが、その割合は5月の第2週にかけて顕著に低下し、「在宅勤務・テレワーク」が急速に拡がった。しかし、5月の最終週以降は「行っていない」割合が揺り戻し、7月の最終週現在で「行っている(1日以上計)」割合は半数を下回っている。
◆フリーランスを含めた調査結果では、「家での食費」を「切り詰めている」割合も増加
全有効回答者(民間企業の雇用者+フリーランス計4,881人)を対象に、過去3か月間(5~7月)の世帯全体の家計収支を尋ねると、「収支トントン」が1/3を超えた(34.6%)ものの、支出が収入を上回る赤字計(28.7%)が黒字計(25.9%)を上回った。「正社員」は黒字計が優勢だが、「非正社員計」では赤字計が1/3を超え(33.6%)、さらに「フリーランス」では4割超(43.2%)と高く、黒字計から赤字計を差し引いた赤字超過が▲28.2ポイントに及んでいる。
また、全有効回答者を対象に、「感染の収束が見えないこと」についてどれくらい不安を感じているか尋ねると、かなり不安とやや不安を合わせた「不安」計が8割を超え(86.9%)、「不安はない」計(9.5%)を大きく上回った。特に「収入の減少に伴う生活への支障」に対する不安は、「正社員」(61.3%)より「非正社員計」(65.6%)、「フリーランス」(71.1%)ほど高く、昨年1年間の世帯年収が低いほど概ね高まる傾向がみられた。
これらの結果をみると、今後の課題として、正規・非正規を問わず「収入の減少」に対する対策、いったんは増加したものの減少に転じた「テレワークの定着」、多くの不安を抱える「非正規へのしわ寄せ」への一層の対策が求められるところです。
【労働政策研究・研修機構「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査 」(一次集計)結果(PDF)】
高橋 邦名(たかはし くにかた)
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