人事労務トピックス

出退勤時に打刻しない勤怠管理の最新動向

◆PCの起動・終了ログなどから労働時間を予測する勤怠管理のクラウドサービス
ソフトウェア開発の株式会社ソニックガーデンは4月1日、自社が提供する月額制の“打刻レス”勤怠管理ツール「ラクロー」が、労働基準法の「賃金台帳への労働時間記載」(同法108条および施行規則54条)と、改正労働安全衛生法の「労働時間の状況把握」(同法66条の8の3)に適合している旨、厚生労働省に確認がとれたとするプレスリリースを公表しました。
ラクローは、PCの起動・終了ログ、カレンダーの予定時刻、メールの送信時刻などから労働時間を予測する、勤怠管理のクラウドサービスです。従来の勤怠管理と違い、従業員による「打刻」や「時刻入力」のプロセスがないのが大きな特徴となっています。同社は、4月からいよいよ施行された働き方改革関連法にともない、ユーザーから「法が求める労働時間管理にラクローが対応しているのか」という質問が相次いでいることへの対応としています。
◆勤怠管理(打刻)と「適正把握ガイドライン」の関係
労働時間管理における重要な指針として、平成29年1月策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下「適正把握ガイドライン」)があります。これにおいて、国は使用者に対し、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」を求めており、その方法は労働者の「自己申告」ではなく、「客観的な記録」(タイムカード、ICカードによる入退室ログ、PCの使用時間の記録等)に基づくことを原則とするものとしています。やむを得ず「自己申告」による場合は、自己申告による時間と、入退場記録やPC使用時間記録を基にした時間に乖離が生じているときに、実態調査と補正をすること等をしなければなりません。
前述のプレスリリースによれば、従来型の勤怠管理サービスは適正把握ガイドラインにおける「自己申告」に相当するのに対し、ラクローは「客観的な記録」として扱われるので、労働時間管理に多大な労力を必要とせず、未払い残業代請求や残業時間上限超過など法令違反リスクもないとのことです。
◆自社にあった勤怠管理は?
労働者を対象とした勤怠管理と打刻に関する民間調査(HR NOTE「勤怠管理に関するインターネット調査」2016年実施)によれば、「あなたの勤め先の勤怠管理方法」で多いのは「タイムカードにて打刻」26.4%、「紙の出勤簿に記入」19.9%、「PCのWebブラウザよりログインして打刻」15.6%と、アナログな手法もまだまだ根強いようです。また、「勤怠管理に関する不満」としては、「正確な勤怠管理ができていないように感じる」15.0%が最多の回答でした。労働者にとって、「正確な勤怠管理」(=適正な労働時間管理把握)がされないことは、サービス残業や過重労働の温床となるおそれがあり、関心の高いところです。
ラクローのような新手法にしろ、従来の手法にしろ、法律が求める要件と従業員が求める要件の双方に対応した勤怠管理をしたいものです。
【参考】
株式会社ソニックガーデン ニュース

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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