人事労務トピックス

社労士が解説!労務問題 Q&A「定額残業代」

定額残業代(固定残業代)制度とは、毎月の残業代(割増賃金)を定額で支払う制度を意味します。
割増賃金は原則として、一賃金計算期間内に発生した時間外・休日・深夜労働の実労働時間を計算し、それに割増賃金の時間単価を乗じることによって算出します。これに対して定額残業代は、実際の時間外労働の時間数に関わらず一定時間分の定額の割増賃金を支給するものです。
ところが、定額残業代に関するトラブルが急増しています。労働基準監督署の調査や裁判などで定額残業代として認められず、過去にさかのぼって残業代の支給が必要となるケースもあります。
適法に定額残業代を導入するためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 基本的な賃金と残業代部分が明確に区分されている
    ※「基本給(○○手当)に残業代を含む」という形では不可
  2. 就業規則や雇用契約書に金額や時間数が明確に記載されており、本人が残業代であることを理解している
  3. 実際に計算した残業代が固定残業手当の金額を超える場合は、不足分を支給している

以上のように、定額残業代の導入に当たり、賃金規程等によって、明確に定めておく必要があります。
何ら定めがない場合、割増賃金の額が不明確な場合は、時間外労働を行った労働者に対し、割増賃金の全額を支払う必要が生じる可能性がありますのでご注意ください。
また、新たに定額残業代を支給する場合で、それが不利益変更に当たるときは、本人の同意が必要となります。

【事例】未払い残業代遡及支払い計算
月給32万円の社員が、平均月40時間の残業をしていた場合で、まったく残業代を支給していなかった場合、未払い残業代は次のように計算されます。
320,000円÷160時間×1.25=残業単価2,500円
※160時間は月平均所定労働時間
賃金は2年間で時効になるため、最大2年分の請求が可能
2,500円×40時間×24カ月=2,400,000円

【規定例】
第○条 営業職に就く者に対し、30時間分の時間外労働に対する手当として、営業手当を支給する。
  2 前項に定める時間を超えて時間外労働を行った場合は、その時間数に応じた時間外手当を別途支払う。

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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