人事労務トピックス
11.62018
社員の「やる気」と企業ミッションの連動
従業員 1 人ひとりが「やる気」で満たされ、社内が活性化していく。こうした組織体を作り上げるためには何が必要でしょうか?
各人の「やる気」と企業ミッションを連動させる。この取り組みが必要不可欠です。
まず、経営理念を実現するために部門単位で何をするか、各部門が自らのミッションを整理し、経営理念を踏まえた形で部門ミッションを作り上げていきます。
各部門があるべき姿を確認・整理し、それを部門ミッション宣言としてまとめていくプロセスの中で、その部門で働いている 1 人ひとりがベクトルを合わせていきます。
これは、部門ミッション宣言の作成に各部門のメンバーが関わっていくことで可能となります。
部門ミッション宣言の作成は、部門が大きい場合には課長クラスが全員参加し、小さい場合には全員が参加することになります。
「7 つの習慣」にあるように、実質的には「参加なければ決意なし」ということになるため、ブレークダウンしたミッションづくりは全員参加型となるよう最小化する必要があります。
全員が参加し、作り上げるプロセスを確認・認識することで、各人の腑に落ちるところまで持っていくことができるからです。最終的には人生におけるミッションを問うことになりますが、企業人として捉えた場合、個人個人が会社としてのミッションに合わせて整理することになります。
プルデンシャル生命などは、各社員が「私はこういう生き方をする人間です」と自分のミッションを表明しています。
明確な部門ミッションのもとで、個人ミッションとして何のために仕事をしているのか、あるいは何にやりがいを感じて仕事をしているのか、すなわち「やる気」の出ている自分の姿を具体的にイメージし、それを宣言文にします。
この宣言は心理学の領域ではアファーメーションと呼ばれ、自己実現に向かわせるパワーとなります。
※アファーメーション…自分自身が望む結果をすでに手に入れた状態、自分にとって好ましい考え方・表現・習慣などを明確にして(ビジョナリー化)、それを宣言すること。
この宣言を繰り返し反復することで、その人の脳の中に、その思考パターンの回路が強化され、その人の潜在意識のパワーを引き出し、目標達成に導く効果があるとされている。
目標を設定して宣言する、このやり方は金メダルを目指すスポーツ選手にも見られ、アファーメーションは金メダルを取るための、いわばオートパイロット機能といえます。「やらされている」という気持ちがないため、訓練自体がつらくなくなります。
自分のミッションのために自分が努力をするので、傍から見ると過酷な訓練であっても本人はつらいと思わなくなります。陸上競技の100mの選手が運動の質量ともに限界を超えるまで肉体を働かすことができるのは脳の働きだと、脳科学者の茂木健一郎氏は言っています。
普通の人は大脳全体の5%~10%程度しか使っておらず、100%使おうとすると脳が壊れないようにリミッターが働くそうです。理論上は100%使うことができると凄いことになりますが、超一流のアスリートはリミッターを外すくらいのことをやり遂げるそうです。
アファーメーションは企業人に限らず、個人としても重要なことです。大リーグのイチローの小学生時代の作文はアファーメーションそのもので、自分の人生の生き方を宣言した内容です。
私はセミナーでよく話をしますが、お子さんをアファーメーションで導くと、ものすごい潜在能力を発揮するようになります。
企業人としてのアファーメーションを捉えると、部門ミッションを実現するために単に自分が従うのではなく、ベクトルを合わせて自らの役割を果たすことで、「やる気」が極大化します。
そのためには、各人のミッション、組織の中で果たすべき役割が明確になっていることが条件となります。それに伴い、自分のためにやっているという、ポジティブな姿勢で各人が取り組むことになるわけです。このような進め方に沿い、目標管理などのプロセス面談を実施する企業が増えています。こうした取り組みを繰り返し行うことで、従業員は腑に落ちた仕事をやることができるようになってきます。
そのようなベースがあって、自然に企業人として動きだします。潜在的なものが顕在化することが、アファーメーションで固めたミッションということになります。やればやるほど、ハーズバーグの動機づけ要因とリンクしていきますが、そのためには衛生要因が満たされることが前提になります。
動機づけ要因に持っていくためのベースが衛生要因にあり、衛生要因があってこそ、企業ビジョンと個人のミッションのベクトル合わせが可能となります。
経営理念を作った後に、部門ミッションの策定、個人ミッションへの落とし込みを実施し、食事会等を連動させて行うと、かなり効果が上がってきます。
研修だけではなく飲食の場も設けることが、潜在意識に落とし込む上で有効な手段となります。
高橋 邦名(たかはし くにかた)
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