人事労務トピックス

「アウティング」は不法行為

◆アウティングとは
 アウティングとは、本人の同意なしに、セクシュアリティにまつわる秘密(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、性同一性障害であること等)を他者が周囲に暴露する行為を指します。例えば、当事者から好意を伝えられた人が第三者に「あのひと、同性愛者なんだよ」と話すのも、相談を受けた人が「○○さんって、実は元・男性(女性)なんだって」と漏らすのも、本人の同意がなければアウティングに当たります。

◆アウティングをしてしまうと……
 アウティングをされた当事者は、深く苦しむことになります。職場で行われた場合、退職のみならず、うつ病などの精神疾患やハラスメント裁判、最悪の場合は命にかかわる可能性すらあり、企業としても「知らなかった」では済まされない問題です。実際に、アウティングを巡る事件について裁判が行われており、高裁判決の際は、アウティングが「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為」という判断がなされています(一橋大学アウティング事件)。また、アウティング被害を巡って企業側が従業員に謝罪、解決金を支払って和解したという報道もありました。

◆対策は事業主の義務
 厚生労働省によるパワーハラスメント防止のためのガイドラインでも、労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること、すなわちアウティングがパワハラに当たることが明記されています。つまり、事業主にはその防止措置が義務付けられています。具体的な防止措置としては、職場での方針の明確化・周知・啓発、相談体制の整備、問題が発生した際の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護のための体制整備などがあります。多様性を尊重し、従業員が安心して働ける環境を構築することで、企業の発展につなげていきましょう。

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高橋 邦名(たかはし くにかた)

(株)高橋賃金システム研究所 代表取締役/多摩労務管理事務所 代表。 社会保険労務士。賃金体系を専門に、労務管理制度の策定から定着、人材の開発・育成という従業員を活かす『活人コンサルティング』をテーマに活動し、人事から経営を支援する。セミナー講演多数。「『社長、やりましょう!』と社員が言いだす経営」(H&I)、「CSR時代のミッションマネジメント」(泉文堂)、「人を活かせば、企業はまだ伸びる」(鳥影社)他多数。

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