ビジネスコラム 第9回「管理職の経営マインドを高める」

本連載の前回(第八回)では、「人財=資本」である人財価値経営における実際の賃金制度の設計として、人財価値アップ型賃金制度を提案した。等級制度をベースにしながらも、評価や処遇(昇給、昇格、賞与)、人財育成をきっちりと連動させる賃金制度である。
評価や処遇。人財育成をつなげながら運用していく人財価値アップ型賃金制度を十分に機能させるためには、管理職の役割は大きい。すなわち、管理職の経営マインドをより高めていくことが求められる。今回はその管理職が組織活力の要(かなめ)となるような処遇システムを提案したい。

 

管理職の役割が違ってきた

 

これまで、企業の多くは、管理職の意味をあまり考えることはなく、任命者であれ、任命される側であれ、役職を一般職の延長あるいは功績ポストと考える節があったことは否めない。
しかし、「名ばかり管理職問題」以降、管理職の本質がクローズアップされ、経営管理者層として、一般職とは果たすべき仕事の内容と質が違うということが認識されるようになった。すなわち、経営陣の一員として、部門の業績に対する責任だけではなく、部下に対する管理・育成能力というマネジメント能力を発揮していかなければならないのである。
高度成長期の管理職には、戦略はトップが策定し、それに沿って業務が円滑に流れるように調整するという中間管理職的な色彩が強かった。そのためには、功労としての管理職でもさほど支障がなかったといえる。
しかし、低成長時代の今日では、会社全体戦略の理解、部門戦略策定、目標管理などの能力を高めるなかで日常業務を管理してその担当する部署を統制し、組織風土の醸成をしていかなければ、企業は成長することはない。
実際、日本能率協会「当面する企業経営課題に関する調査」(2010年10月)では、人事に関する経営課題のトップとして、「管理職層のマネジメント能力向上」が他の項目を圧倒的に引き離すようになってきた。(図1参照)

図1「管理職層のマネジメント能力向上」が経営課題のトップ
日本能率協会「当面する企業経営課題に関する調査」(2010年10月)より

さらに、同調査における実際の「管理職層の意識と行動の傾向」では、「新しいことに対する挑戦」について、「あてはまらない」との回答が半数近くであり、「会社に対する提案」も3割以上が「あてはまらない」としている。(図2参照)

図2 実際の「管理職層意識と行動の傾向」
日本能率協会「当面する企業経営課題に関する調査」(2010年10月)より

 

このギャップを埋めていくためには、経営のマインドアップを呼びかけるだけではなく、管理職の日常業務からマネジメント能力を高めていくしくみと管理職の処遇制度の設計が求められる。
前者が、本連載の前回(第八回)で提案した人財価値アップ型賃金制度の運用であり、後者は管理職手当など処遇システムの大幅な見直しにより、管理職としての意識を高め、管理職のマネジメント能力向上により、組織の要(かなめ)となって機能させていくための処遇制度である。
さらに、管理職の処遇システムを見直すことは、一般職の賃金体系も含めた全体的な賃金の体系の検討も必要になってくる。

 

業績連動型管理職手当の導入

 

管理職の処遇を考える場合、定期昇給により毎年上がり続ける基本給のしくみでは、役職が変化しても、賃金はさほど変わることなく、仕事の本質面から基本給ラインから離れた管理職の賃金カーブが必要となってくる。
また、一律の管理職手当では、管理職のマネジメント実績が反映されることなく、管理職としての能力向上へのモチベーションは上がることはない。
したがって、管理職の経営マインドを高める処遇を検討する方向性は次の二点があげられる。

管理職の経営マインドを高める処遇を検討する方向性
① 基本給高額処遇方式から管理職手当処遇方式へ
② 業績連動型管理職手当の設定

①では、一般社員の基本給のラインの延長線上で基本給を高額化することで管理職としている処遇方式から、基本給のラインから離れて管理職手当を高額化する処遇方式にすることによって、管理職の賃金カーブを形成させていく。
そのうえで、②の業績連動型管理職手当を導入し、部下育成とマネジメント能力を高めることによる業績の達成を期待する管理職手当の本質をより反映させて、管理職手当の一定範囲内で上下することを可能にすることである。
図3はその目安となる管理職手当バンド例である。従来の主任、係長の延長で課長職がとらえられていた考え方では、さほどその手当額に差はなかったこととの違いに注目していただきたい。
そして、課長、部長のそれぞれの手当額の変動幅は5万円以上になっている。

 

(名ばかり管理職問題対応)と経営マインドアップ

 

図4 管理職評価の視点

「名ばかり管理職問題」として、社会に衝撃を与えた日本マクドナルド事件判決(平成20年1月・東京地裁)以降、管理職は「管理監督者」として、その要件を厳格に守ることが指導されてきた。
本提案の管理職処遇策の①プラス②は、要件のひとつである管理職手当は時間外労働相当分以上でなければならないというコンプライアンス(法令順守)リスクの対応としてだけでなく、とくに業績連動型の管理職手当とすることにより、管理職のマネジメント能力の向上が期待される。 一方、マネジメント能力の発揮による管理職のやりがいを高めていくためには、管理職に対する人事評価の視点も、大きく変化させなければならない。
すなわち、図4のように、目標必達だけではなく、部下の育成、業務の改善・改革への取り組みの成果、そして、組織活力の要としてトップとのビジョンを共有し、部下のモチベーションを高め、勇気を与える役割に対する評価である。
人を育て、部署の組織活力を高めるマネジメント能力を発揮して実績を残す経営マインドの高い管理職が貢献度評価の一番高い管理職なのである。業績連動型管理職手当の導入により、貢献度の高い管理職の処遇を高めていくことが可能になってくるのである。

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